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22 2017

利川の山荘8 <ウギュの転落> ~番外編~

【成均館儒生たちの日々】に登場するキャラクターを、勝手に現代に置き換えた二次創作です。
原作やドラマ版から引用した部分もありますこと、ご容赦ください。



「仕事を片付けてきた―――」

ソンジュンとユニがソファに並んで座り、ソンジュンの斜め前に腰を下ろしたヨンハが、ユニを山荘に残しソウルに戻ってからの経緯を話し始めた。

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ユニを車に乗せて連れ去った日の夜遅く、ソヨンの部屋に残されていたパソコンに、正体不明の男からの、メッセージとも受け取れる動画を見たあと、ハ・ウギュは自宅へ急がせた。

ひっそりと静まり返った自宅に着くなり、側近に、男の言っていたSDを探せと命じ、自分は書斎に向かった。
しばらくして、側近が書斎に入ってくると、困惑した表情でウギュに言った。
「旦那様…ございません。ポドゥルを起こして尋ねましたが、知らないと……あとは奥様か、お嬢様がご存知ではないかと…」
妻かヒョウンが何かを受け取っているのなら、起きて自分を待っているはずだと、ウギュは思った。
ポドゥルとは住み込みの家政婦だ。ポドゥルが知らないと言うのなら、自宅に届けたというのは虚言だ。

「くそっ!!…あれが、もし世に出たら……私は、完全に終わりだ……動画を残した男の正体を割り出して、何としてもSDを取り戻せ!金はいくらかかっても構わん!!役立たずのソンとキムの行方もだ!」
憎悪に満ちた表情で怒鳴るウギュに、側近は顔に困惑を貼りつけたまま頷いた。
「……はい、旦那様…できる限り……」

翌日。
連絡すると言ってきた正体不明の男からは何の接触もなく、ウギュの側近も四方に手を伸ばして奔走したが、何の手がかりも得られず途方に暮れていた。

その日の夕方になって、事態が動いた。
ソンジュンの父、ジョンムやウギュが所属するハンヌリ党本部で、カタカタとキーボードを打ちながら仕事をしていた数人のパソコンが、突然操作ができなくなり、画面が真っ暗になったかと思うと、突然男の顔が映し出された。
漢江で水死体となって発見された、カン・ジョンジュであることは誰も気付いていない。

  『愛するヨンジェや、この父はまもなく殺されるだろう。だが、誰にとは言えない。万が一、この動画が誰かに渡れば、お前に危険が及ぶだろうから―――』

あちこちのパソコンから、同時にジョンジュの声が流れ、党内がざわつき人が集まってきた。




  『―――ヨンジェや、20歳の誕生日おめでとう。お前の大好きなテディベアを贈ったよ…ポケットの中を見てごらん―――良い父親ではなかったことを許して欲しい…お前の幸せを願っている。愛しているよ―――』

画面が変わり、上半身裸のふたりの男が映し出された。

  『私たちは、ここで委員会が行われた日に、梨花女子大学の学生を連れ去り―――』

男たちの口から、ユニを連れ去り、性行為を行っているライブ動画を、ハンヌリ党本部の委員会の最中、パソコンを遠隔操作して公開する予定だったと語った。
そして、カン・ジョンジュに大量の酒を飲ませ、落ちることをわかった上で、漢江の岸壁に放置したことも自白した。

  『全ては、企画財政部長官のハ・ウギュ氏の命令でやったことです―――』

ウギュの名前が飛び出すと、途端にどよめきがおこり、バタバタと人の動きが激しくなる。
偶然居合わせたウギュの秘書のひとりが、携帯電話を取り出してウギュに電話をかけた。
「先生、私です。今、党本部にいますが、大変なことに―――」
秘書は自分で見て、聞いたことをウギュに報告した。
黙って聞いていたウギュは「わかった」とだけ返事をして、通話を一方的に切った。

.。o○○o。..。o○○o。..。o○○o。.

同じ頃、党本部の執務室にいたジョンムの耳にも、党内で起こった騒ぎの内容が届いた。
ジョンムは事実関係が明確になるまで、外部に漏れることがないように指示を出した。
そしてウギュと連絡を取り、早急に党本部へ赴くようにと秘書に伝えた。

ジョンムは執務机に肘を置き、額を手で支えながら険しい表情でだんまりを続けた。
沈黙が続く執務室の電話に内線が入り、秘書のキム・サンチュンが受話器を取った。

「総理、ク・ヨンイル氏が、緊急の面談を要望されています…ハ長官の件で、早急に会わせたい女性を連れて来ているそうです…いかがなさいますか?」

―――女性?

女性と聞き、訝しげな表情を見せたジョンムだが、ウギュに関連するというので、通すように秘書に伝えた。

防音壁に囲まれ、さらには電波も届かない、完全に外部とシャットアウトされた応接室に案内されたヨンイルは、緊張して顔をこわばらせた少女を連れていた。

「―――突然の謁見を、どうかお許しいただきたい」
「いえ…党内を騒がしている人物の件で、と聞きましたので…そちらのお嬢さんは?」
ジョンムが問いかけると、ヨンイルは重い表情で頷き、少女の肩に手を置いて「大丈夫だよ」と促した。

「は、初めまして…私は、漢江で溺れて死んだカン・ジョンジュの娘で、ヨンジェと申します。実は、生前の父が、私に遺したものをお見せするために、こちらへ来ました」
そう言って少女が差し出したのは、クリスタルガラスのビーズがあしらわれた、長方形のペンダントトップだった。
ジョンムは、ついさっき秘書の口から耳にした、カン・ジョンジュという男の名と、彼の娘だという少女が面会を申し入れたのは、単なる偶然ではないことをすでに察知していた。
ジョンムは、キラキラと光るペンダントトップを、ヨンジェから受け取りながら尋ねた。
「これは?」
「はい…ペンダントを模ったUSBメモリーです。この中に―――」

少女は、人の名前と、企業名や金額などが記載されたリストのようなデータが入ってると言った。
ヨンジェ自身の誕生日の翌日に、父が漢江で溺死したと連絡が入り、悲しみに暮れている最中に、プレゼントとして届いたものだ。
【ヨンジェへ、誕生日おめでとう】とだけ書かれたメッセージだけだったが、明らかに高価なペンダントトップは、自分の好みとは全く違うもので違和感を覚えた。
変だと思って触っているうちに、これがUSBだということがわかり、中を見ても何のことかさっぱりわからないまま、放置していたという。
しばらくたって、ク・ヨンハという青年が自分を訪ねて来て、父から何か受け取っていないかと聞かれた際に、このUSBメモリを彼に見せると、誰にも知らせず大切に保管するようにと言われて、昨日まで持っていたと語った。

 『きみのお父さんは、事故で亡くなったのではないかもしれない……いいかい?何か変わったことがあれば、すぐに知らせるんだ……私はきみの味方だから』

ヨンハにそう言われていたヨンジェは、数日前に自分が差し出し人で、宛先不明で戻ってきた小包が届いた、とヨンハに連絡をした。
出した覚えも、宛先にも身に覚えのない小包を開けてみると、何重にも包装されたマイクロSDが入っていた。
わけのわからないSDを開くことを恐れ、中身を見ないままヨンハに託した。

二日前の夜、働いていた店にヨンハの使いだという人物がやってきて、すぐに安全な場所へ連れて行くと言われ、ヨンハの実家に身を隠し、今夜、ヨンイルに付き添われてハンヌリ党本部にやってきた。

「お父さんを亡くされて、本当にお気の毒だったね……お父さんのご冥福のために、真相を明らかにすることを、誓って約束させてもらおう…」
「ありがとうございます」
ジョンムの言葉を聞いた少女の目に涙が浮かんだ。

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昨夜遅くに帰宅したウギュは、一日中、自宅の書斎に閉じこもり、妻の呼びかけにもうわの空だった。
夕方になって、党本部で起こった騒ぎを、秘書の電話で知ったウギュは、激しく動揺し経験したことのない焦燥感に襲われた。
そしてジョンムの秘書から、党本部へ赴くように連絡が入ると、書斎のソファに崩れ落ちた。

数時間後、ハ家に戻ってきた側近に、自分をソヨンのマンションに連れて行けと命じた。

妻よりも心安らぐ女、ソヨンを求めマンションにやってきたが、部屋に明かりはなくリビングは静まり返っていた。
ガタガタと奥の部屋から音がして、恐る恐る扉を開けると、真っ暗な部屋でうごめく影を捉えた。
照明を点けると、そこには背中合わせにロープで縛られた、ソンとキムの二人の姿があった。
着衣は着せられているものの、口は粘着テープで塞がれている。
彼らはウギュの姿を見るなり、目を見開いて解いてくれと訴えた。

ロープをほどいてやると、長い間身動きが取れなかったのであろう、ぐったりと身体を横たえた。
ゆっくりと身を起こし、冷めた表情のウギュを睨みつける。
ふてぶてしい彼らの態度に、威勢を張る気力は残っていなかった。
ふたりに背を向けて部屋を出たウギュは、ソヨンの寝室に向かった。
壁に掛けられていた絵画や、ソヨンが大切にしていた小物が無くなっている。
クローゼットの中は空にされ、部屋の隅のダンボールにきれいにたたまれた衣類が入っていた。
ソヨンが出て行ったことを悟ったウギュは、その場で膝から崩れ落ちた。

「旦那様…」
ウギュの背後から、側近の冷たい声ががらんとした部屋に響く。
振り返ると、側近が批難するような視線を向けてきっぱりと言った。
「旦那様……私、お暇をいただきとうございます…今まで……お世話になりました―――」

築き上げてきたものが、音を立てて崩れて行く。
絶望感に包まれ、なすすべもなくなった初老の男の耳には届かなかった。

3人の男らは、ゴミでも見るような目を向けながら、部屋を出て行った。
ウギュは誰もいなくなった部屋のソファで、空が白み始めるまで、ひとりウイスキーを煽った。

早朝、タクシーで自宅に戻り、車を降りたところを、検察庁特捜部の捜査官を名乗る数人の男らがウギュを取り囲み、贈賄罪の容疑で任意同行を求めた。
数時間に及ぶ取り調べの最中、息子である指名手配中のインスが逮捕されたことを知ると、放心状態で天井を仰いだ。

のちに、逃走中だった側近や、ユニを暴行しようとした男らも逮捕されると、彼らの供述からカン・ジョンチュンの殺害にもウギュが関与した疑いで逮捕され、韓国中を揺るがした大きな事件になった。



※挿入する画像は、管理人の悪趣味により編集・加工を施しており、あくまでもイメージです。否定や侮辱ではございませんこと、ご容赦ください。実在する人物・団体とは一切関係がございません。

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1 Comments

aunt Bubble  

拍手コメントをくださいました、やすべぇ様

やすべぇ様
こんにちは。バブルぅです。
拍手&コメントくださりありがとうございます。
半年前に、香港まで広げてしまったお話を、やっと着地させたといったところでしょうか…
不時着といった感じ…
えっ?そういうことではない!?
m(_ _)m
では…明日は最終話でございます。
またのお越しをお待ち申し上げます。
バブルぅ

2017/12/22 (Fri) 23:56 | EDIT | REPLY |   

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