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30 2017

さらわれたユニ9

【成均館儒生たちの日々】に登場するキャラクターを、勝手に現代に置き換えた二次創作です。
原作やドラマ版から引用した部分もありますこと、ご容赦ください。



ソヨンが朝食を作っている間、ユンシクは工房の壁に飾られた絵画を見てまわる。
部屋の隅に無造作に置かれた、大きなスーツケースと、ボストンバッグが目に入った。

―――出てきたんだ…


ソヨンの過去の職業や、官僚の愛人らしいということは、ヨンハの口から聞いていた。
彼女の生い立ちや故郷のことも、本人から聞いた。
豪華なマンションに住み、高価な衣装と宝飾品を身に着けていても、ユンシクの目にはどこか物憂げで幸せそうには映らなかった。

ユンシクは、ソヨンに頼まれて、絵のモデルをするために何度かこのアトリエを訪れた。
キャンバスの向こうから、自分を見つめるソヨンの瞳に目を奪われ、思わず目を逸らしたことも何度かあった。
目が合えば微笑みを交わし、次第にユンシクはソヨンに恋心を抱いていく。
絵が仕上がった時、少女のように愛らしく微笑むソヨンを、ユンシクは思わず抱きしめたい衝動に駆られた。
あげかけた腕を下ろし、好きになってはいけない女性だと、自分を戒めた。

さほど多くない荷物をまとめて、住んでいたマンションを出てきたことを悟ったユンシクは、もう彼女を縛るものはなくなったのだと、ソヨンが年上だろうが、年下扱いされようが、構わなかった。
彼女を危険から守らなければ、と使命感が沸き起こり、己を奮い立たせた。

.。o○○o。..。o○○o。..。o○○o。.


ユンシクとソヨンは、日中をアトリエの中だけで過ごし、夕方になるとヨンハの使いだという人物が、たくさんの食材を届けに来た。
ふたりは一緒にキッチンに立ち、夕飯の準備をする。
ユンシクの楽しそうな顔を見ながら、ソヨンはひと時の幸せを満喫していた。
もう間もなく、この目の前にいる愛しい青年と、別れの時がやってくることを、ソヨンは悟っていた。

美味しそうに箸を運ぶユンシクにソヨンが尋ねた。
「美味しい?…たくさん食べてね」
「ソヨンさん、また僕を子供扱いしているでしょう?」
「あら、こんな大きな子供はいないわ…とても素敵な男性を目の前にして…」
うふふ、と綺麗な笑みを浮かべて、ユンシクを覗き込んだ。
ユンシクは箸を置き、ソヨンを見つめて言った。
「綺麗だ…ソヨンさん」
「え…?もう…年上をからかうものじゃないわ…」
まっすぐな目で見つめるユンシクに、ソヨンは目を逸らして身体を起した。
離れようとするソヨンの手を、ユンシクはとっさに握ると、彼女に言った。
「……僕じゃ、だめですか?」
「…え?」
ユンシクの手のひらが、ソヨンの頬にかかり、親指で彼女の赤い唇をなぞる。
ゾクゾクする感覚が背中を駆け抜け、ソヨンは思わず切ない表情を浮かべた。
「……好きだ、ソヨンさん」
「……」

―――ユンシクさん…

ユンシクの顔が近づくと、ソヨンは静かに目を閉じた。

.。o○○o。..。o○○o。..。o○○o。.


古風な韓屋造りのアトリエは、ぐるりと生垣で囲まれていた。

道路側に面した生垣と家屋の隙間に身を潜め、窓から中を覗く怪しげな男の姿があった。
黒のパーカとスウェットの上下に、黒のスニーカーを履いている。
頭からすっぽりとフードで覆った中で、毒々しい表情を浮かべていたのは、指名手配中のハ・インスだった。
頬がこけ、無精ひげを生やして、かつての精悍さは見る影もない。

バー【JOJO】での事件以来、表舞台から姿を消したインスは、古い仲間の住処を転々として身を隠していた。
行く先々で捜査の手が回り、いよいよ行くあてのなくなったインスは、ソヨンのアトリエまでやってきた。
以前、街でソヨンを見かけたインスは彼女を尾行し、父親のウギュにも秘密にしているアトリエがあることを知っていたが、自尊心が邪魔をして近づくことはしなかった。
仲間を失い、家族の前にも姿を見せられない。精神的にも追い詰められたインスは、ソヨンに会いたい一心で、自尊心を捨ててまでやってきた。
それなのに、彼女が綺麗な微笑みを向けるのは自分ではなく、見知らぬ若い男だった。

一度も見たことのない、恋をする女の表情だ。
父親の愛人であることはわかっていたが、ウギュに向ける微笑みはしたたかで冷たいものだった。だから割り切れた。
若い男の唇がソヨンの唇に重なる瞬間、インスは拳ほどの石を拾い上げ、窓に向かって投げつけた。

  ガッシャーン!!

衝撃音と一緒にガラスが飛び散る音が、部屋中に広がる。
驚いたふたりが、音のした窓ガラスを振り返った。
ユンシクは、とっさに自分の身を盾にソヨンを背後に隠す。
「ソヨンさん、奥の部屋に隠れて…」
「だめ!危険だわ…」
ユンシクが大丈夫だからと告げると、割れた窓ガラスに近づいた。

インスが窓に手をかけた瞬間、パトカーの回転灯が壁に反射するのを見て、慌てて隣家との間の狭い路地に身を移すと、地面にじっと伏せて息を殺した。
パトカーのライトが、割れた窓ガラスを照らし、ソヨンのアトリエの前で停車すると、警官が降りて来てインターホンを鳴らした。
中から出てきたユンシクに、一人の警官が尋ねた。
「何か、変わったことはありませんか?」
「あ…いえ、窓ガラスが割れて…でも、飛び石とかじゃないかな…はははっ」
事を荒立てたくないユンシクは、笑ってごまかした。
「ガラスが…?見ても?」
ユンシクに尋ねた警官が、もう一人の警官に目配せを送ると、頷いてその場を離れた。
「あの…」
「心配ありません。少し周辺を見に行かせただけです」
「…ありがとうございます」
不安そうな表情を浮かべるユンシクに、警官は安心させるようににっこりと笑顔を見せた。

やがて警官が戻ってくると、ガラスが割れている以外、変わった様子はないと伝えた。
警官は、しばらく周辺を巡回しているから、何かあったら通報するように、と言ってアトリエをあとにした。

警官たちがパトカーに戻った時には、すでにインスはアトリエから遠く離れた場所にいた。

割れた窓ガラス


ユンシクが部屋に戻ると、割れたガラスを拾い集めるソヨンの小さな肩に、優しく手を添えて言った。
「ソヨンさん…僕が、守ります」
ソヨンはユンシクの肩に頭を乗せて寄り添い、静かに目を閉じた。

割れたガラスを片付けると、鍵のついた雨戸を閉め、しっかりと戸締りをした。
そして二人は小さなソファで寄り添い、一晩中起きたまま不安な夜を過ごした。



※挿入する画像は、管理人の悪趣味により編集・加工を施しており、あくまでもイメージです。否定や侮辱ではございませんこと、ご容赦ください。実在する人物・団体とは一切関係がございません。

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こんにちは。バブルぅです。
お越しくださり、感謝申し上げます。
そして、温かいメッセージや拍手くださる皆様、いつも本当にありがとうございます。

もう、12月なんですね。
今年の1月にスタートしてから、早いもので1年…
飽きっぽく、気まぐれな管理人が、ここまで続けられるのは、奇跡としか言いようがありません。
これも、ゲスト様の応援の賜物だと、重ねて御礼申し上げます。

さて、あちこちにストーリーを散らかしまくった、カテゴリ【さらわれたユニ】は、今回が最終話でございます。
ずいぶんと前、ウギュ親子の悪事を、香港や麻薬、果ては殺人!?まで飛ばしてしまったので…
ようやくここへきて、引っ張り出して、気ままに妄想を膨らませているので、???と思われるゲスト様も多いのでは!?

ウギュ親子 vs. ヨンハですが、次回からのカテゴリ【20.利川の山荘】で終わらせます(;^_^A
もうしばらく、バブルぅの茶番劇にお付き合いください。

明後日12/2(火)からの、新しいカテゴリ【20.利川の山荘】では、序盤はソンジュンがユニを探して奔走し、中盤からはたっぷり(?)カラユニをお届け~♪
終盤に、ウギュへのお仕置き…で、まただらだらと…(だらだら、かい!?)
ヨンハのITを駆使した策(ま~大したこと書けないくせして)と半端ない財力(一番の憧れ)を都合よく使ってます(;^_^A

では…また。
皆様のお越しをお待ち申し上げます♪
バブルぅ
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