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24 2017

さらわれたユニ6

【成均館儒生たちの日々】に登場するキャラクターを、勝手に現代に置き換えた二次創作です。
原作やドラマ版から引用した部分もありますこと、ご容赦ください。



ずいぶんと長い時間が経ったように思われたころ、ユニは車が停まる気配で目を覚まし、窓の外を見渡した。
周囲は闇に包まれ、静かだ。
車のライトだけを頼りに目を凝らすと、周りを木々に囲まれた山荘が見えた。

「ユニ?起きたか?着いたぞ……降りるのを手伝うから、待ってろ」
「大丈夫よ。平気…」

車を降りたユニは、ヨンハに支えられながら山荘に入った。
レンガ造りの洋風の佇まいで、入ってすぐにリビングが広がり、奥には大きな暖炉が備えられている。

ゆったりとしたソファに座るよう促されたユニは、ゆっくりと腰を下ろし、ほっとしたのか全身から力が抜けて、背もたれに身体を預けた。
隣に座ったヨンハは、彼女をやさしく引き寄せて、自分の肩にもたれさせた。
「悪かった。もっと早くに気が付いていれば、お前をこんな目に合わせなくて済んだのに…」
ユニはヨンハを見上げ、弱々しく首を横に振りながら答えた。
「どうして、ヨリム兄(オッパ)が謝るの?ちっとも悪くないのに……こうしてヨリム兄に会えただけでも幸運だわ…」
もしヨンハに助け出されなければ、と想像しただけで、再びユニを恐怖が襲う。
震えるユニの手の上に、ヨンハが労わるように手を重ねた。

トックが薪を運び入れると、暖炉にくべて火をおこした。
暖かな炎の光がユニの瞳を揺らす。ゆらゆらと揺れる火を見ているだけで、気分がいくらか落ち着いた。




トックがヨンハを振り返って言った。
「薪が無くなりそうなので、少し割ってきます」
「そうか。悪いな。少し多めに頼む」
「…すみません、トックさん」
申し訳なさげに謝るユニに、トックは労わるような笑みを浮かべて首を振り、外に出て行った。

「……ヨリム兄?私、知らない男性に車に乗せられて、すぐに気を失ったの…気がついたら、ヨリム兄の車に乗ってた…私に何があったのか教えて?」
ユニは不安な表情を浮かべて尋ねた。
「ユニ…」
ヨンハは、もう一度ユニの手をぎゅっと握り、辛そうな表情を浮かべて言った。
「……多分だが、睡眠導入剤のようなものを打たれて、お前は意識を失った。そして、ソヨンのマンションに運び込まれた」
「え!?」
ユニの顔が恐怖に満ちて、両手を胸の上で握りしめた。
「大丈夫、安心しろ。意識を失っただけで、暴行はされていない…誰が、何のためにお前を連れ去ったか、想像でしかないが…聞くか?辛いぞ?」
「……話して?」

ヨンハは、ユニが意識を失っていた間に起こったことを話して聞かせるうちに、だんだんと顔に暗い影を落とすユニに気が付き、言葉を止めた。
「大丈夫か?もう、話しは終わりだ……ここは、利川にある、俺の別名義で所有する山荘だから、親しい人しか知らない。誰もお前を見つけられないし、追っても来ない。少しの間だけ我慢してここで過ごせ…下の町に馴染みの店があるから、食料などは頼んでおくよ。何か欲しいものがあったら配達の時に頼めばいい。温泉も引いてあるしキッチンもあるから、寒いのと空腹の心配はない……服は…お前のマンションに取りに行くと足がつく。だからへウォンに頼んで適当に買ってきてもらった。サイズが合うといいけど…それから、お前のバッグはあるが、スマホが見つからないんだ。連れ去られてすぐに、処分されてる……」
ユニを探すために、スマホの電波を追ったが、すぐに電波が途絶えた、と語った。
ユニは力なく頷きながら、ヨンハの声に耳を傾けていた。

「さて、どうする?……あいつに伝える?イ、ソンジュン……」
ソンジュンの名を聞くなり、ユニは顔を上げて大きくかぶりを振った。
「…彼には、言わないで」
「はぁ…そう言うと思った……」
ヨンハは呆れ顔でユニの顔を覗き込んだ。
叱られた犬のようにがっくりと肩を落とすユニが、突然、何かを思い出してヨンハに言った。
「オッパ(ジェシン)にも、絶対に言わないで!」
「阿呆!いえるか!!…ことの次第を知ったら、どうするか……恐ろしくて想像するのもごめんだ。うぅー」
ヨンハは、冗談ぽく肩をすくめて震えるフリをすると、ユニはほんの少し笑って見せた。

「だけどなぁ、突然好きな女が黙って消えるなんて、正気でいられると思うか?しかも、あいつ、カランだぞ!?」
「わかってるわ……でも…」
ユニが壁の時計に視線を移した。
夜の10時を回っていた。
夜会が開催され、もしかしてもうホテルに帰っているかもしれない。
ソンジュンは、今夜中にユニに電話をかけてくるか、LINEを送ってくるだろうことは間違いなかった。
ユニのスマホに電源が入っていないことは、すぐに気付かれてしまう。
明日の朝になっても電話がつながらなければ、ひどく心配するだろう。

―――どうしよう…大切な会議なのに…

「やっぱり、伝えなきゃ…」
ユニが決心したようにヨンハを振り返って言うと、彼はそうだろう、とでも言うように頷いた。
「私は、元気だって」
「はっ!?」
「……済州まで行って参加しているのは、彼にとって大事な会議なの…明日も一日あるのに、もしかして集中できないかもしれないわ…私のせいで、彼に迷惑をかけられない…私はいつもと変わりなく、元気に学校へ行ってるって伝えなきゃ!!ねえ、ヨリム兄、お願い、せめてソウルに帰るまでごまかして!!」
「ごまかすって…お前さぁ…ユニ、よく考えてみろ?自分よりも、カランの心配か!?自分がどうして連れ去られて、何をされかけたのか……はあぁ、呆れたやつだよ、本当にお前って女は…」

―――そこがいいところだが…

「ヨリム兄…?」
大きな目を潤ませ、真剣な顔で言われたら、断わるわけにはいかない。
「わかった……お前の身に起こったことは、俺だけの秘密にしておく。カランには…そうだな……ユニがスマホを紛失した、カランが帰るまで連絡ができないと、あとで伝えるよ。それならいいか?それから、ずっとお前のそばにいてやりたいところだが、やることが残ってる。そっちのカタを付けたら、カランに話してもいいな?」
「かた、を付ける…?」
ユニの目が、何をするつもりなのと訴える。
「……大丈夫、ユニが心配するようなことはしないよ。俺は、ク・ヨンハだから」
ヨンハは、ユニの頬を撫でながら目くばせをした。

「ヨンハさん、3、4日分の薪を割っておきました…」
「うん…ありがとう」
トックが戻ってきて、ヨンハに告げた。

―――3、4日…

3、4日と聞いて、ユニの顔が曇る。
「できるだけ早く迎えにくる…約束するよ……ユニ、お前が目の前から突然消えて、平然としていられないのは、カランだけじゃないぞ」
「…うん、ありがとう、ヨリム兄…大好きよ」
「知ってる…あははっ」
ヨンハは優しい笑みを浮かべて、ユニの頭を撫でた。

しばらくしてから、ヨンハとトックはソウルへ帰って行き、ひとり山荘に残されたユニは、長かった一日を振り返った。
すべて自分のまいた種だと自責の念にかられながらも、ソンジュンの顔が脳裏に浮かび、心臓がぎゅっと締め付けられる。

―――ソンジュンさん…

ユニはリビングのソファで毛布にくるまり、膝を抱えたまま、ただ暖炉の火を見つめて一晩中眠らなかった。


※挿入する画像は、管理人の悪趣味により編集・加工を施しており、あくまでもイメージです。否定や侮辱ではございませんこと、ご容赦ください。実在する人物・団体とは一切関係がございません。

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