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06 2017

母の計らい5

【成均館儒生たちの日々】に登場するキャラクターを、勝手に現代に置き換えた二次創作です。
原作やドラマ版から引用した部分もありますこと、ご容赦ください。



ユニとダウンが、大鍋の底に残ったトッポギを小さな鍋に移している最中、ダウンのスマホに着信を告げる音が鳴った。
「電話だわ…」
「早く、出てあげて」
「うん……あ…ジェシンさん…」
電話の相手がジェシンだとわかると、ダウンの頬に薄っすらと赤みが差す。

「もしもし?……え!?…ちょっと……もしもし?ジェシンさん!?…」
電話の向こうで、ジェシンが一方的にしゃべって、通話を切ったような様子だ。
ダウンはユニを振り返り、困ったような表情を浮かべた。
「オッパが、どうかしたの?」
「すぐに、私にひとりで下りてこいって……ユニちゃん、私…」
「もう!!本当に勝手なんだから…ここはいいわ。後はまかせて…ダウンちゃん、ごめんなさい。オッパの機嫌が悪くならないうちに、行ってくれる?」
「ごめんなさい、ユニちゃん…」

早く行って、とダウンを促がし、彼女の後ろ姿を見送ったユニは、大鍋を地面に下ろして、壁面にこびりついたトック(餅)をゴシゴシと、金たわしで力いっぱい擦る。
ふと、誰かが傍に立っている気配と、男物のスニーカーがユニの視界に入ってきた。




「オッパ?」

座ったままのユニが見上げた先には、太陽を背に長身の男性の姿があった。
逆光で目を細めても、顔がはっきり見えず、誰なのかわからない。
「どこに、置けばいい?」
聞き覚えのある、優しいソンジュンの声に、ユニはすっと立ち上がった。

「どうして…?」
「どうして、って…炊き出しを手伝うために…」
ソンジュンは、抱えていた段ボールを地面に置きながら、ためらいがちに返事をした。
「……オッパたちから聞いたの?」
「違うよ……母の代わりに来たんだ…きみがいることを知らずに」
「え…?」
ユニの目に動揺の色が浮かぶ。
しばらくの間、二人の間に気まずい空気が流れた。

「やあ、坊ちゃん。よく来てくれたね…」
ユニの背後から低い声がした。
声のする方を振り返ると、ユン老人と妻のヨリが立っていた。
「ユンさん?」「ユンさん、おばちゃん!!」
優しい笑みを浮かべたユン老人が、ソンジュンに近づき、握手を求めた。
「立派になられたね…」
「お久しぶりです…今日は…」
「君のお母さんが、ここへ寄越してくれたんだね?」
ソンジュンの顔に笑顔が広がり、はい、と大きく頷いた。
状況が飲み込めていないユニに向かって、ユン老人が言った。
「ユニ(ya)。彼はピノキオ友の会の、イ・ソンジュン君だ」
「え…?」
「言っただろ?今日は他所の団体からも、来てくれるって。彼がその人だ」
ユニは、ソンジュンを見上げると、ぎこちない笑顔で自分を見下ろす彼がいた。

ソンジュンは、母が突然ここに寄越した理由が、わかったような気がした。
母は、ユニが、この白砂村にボランティアで来ることを、知っていたようだ。

 『まだ、諦めるのは早いんじゃないかしらー――』

そう言って微笑んだ母の顔が、ソンジュンの脳裏に浮かぶ。

三人の沈黙を破るように、ヨリが声を上げた。
「ほら、私が言った通りじゃない。ユニちゃんと一緒に写ってた男の子は、セリョンさんとこの坊ちゃんだって」
「ああ、お前のいう通りだ……さあ、ユニ?トック(餅)は取れたかい?あんなに力を入れたら、鍋に穴が開きそうだ…はっはっは。ほら、坊ちゃんを連れて、休憩しておいで」
「でも…」
「……ユニ(ya)?ここへは10年以上来てないんだ。案内してくれないか?」
ユニは、複雑な表情を浮かべて、ソンジュンを振り返った。
「いいわ…行きましょう……」

.。o○○o。..。o○○o。..。o○○o。.


10年以上、この場所を訪れていないというソンジュンが、ユニよりも先を歩く。
後ろ手に組んだソンジュンの広い背中を、ユニは寂しそうに見ながら後をついて行った。

「……この家…セナさんの家じゃないかな…?」

ソンジュンは、すでに誰も住んでいないと思われる小屋の戸に、手を添えながら寂しげにつぶやいた。
「ここに、知り合いが住んでいたの?」
どこかよそよそしいユニの口調は、ソンジュンの胸をチクリと刺す。
「うん。小柄なおばあさんだった。目が不自由で……ここに食事を運んでくると、何度も頭を下げてありがとうって…運んだだけなのに。幼いながら、やりきれない思いだったのを、思い出した…」
「そう……」

ソンジュンは、炊き出しの広場まで来ることができない高齢者のために、この坂道を何度も行ったり来たりしたことを思い出した。
懐かしさと、苦悩が入り交じった表情を浮かべるソンジュンを、ユニは、時折り垣間見ながら、彼の後ろを黙ってついて行く。
ソンジュンは、しばらくの間ぐるりと周辺を歩いたあと、崩れかかった廃墟の傍の、石やがれきが積まれた上に腰を下ろした。
人ひとり座れるスペースを空けてくれている。ユニは何も言わず隣に座った。

「小学生のころ、母に連れられて、今日みたいな炊き出しの手伝いに来ていたんだ……だけど、父が党の幹部になると、母への慈善活動こそ止めるよう言わなかったけれど、ここに来るのだけは、控えるようにと言われたそうだ……自分にも行くな、と言われているようで、僕もそれに従った。僕は幼くて、父の言うことは全て正しいと思ってたから……さっきユンさんと会って、昔、ここの人たちに約束したことを思い出した」
「約束?」
「うん…大きくなったら、ここの人たちをきっと助けるって……なのに、長い間忘れていたんだ…そんな自分が情けなくて、恥かしくてたまらない…」
消え入るような声で言いながら、ソンジュンは足元に視線を移す。
「今からでも遅くないわ……」
ユニは、一緒に、と言いかけて口を閉じた。

ユニの言葉に、勇気づけられたソンジュンは、顔を上げて彼女を見た。
「ユニ…どういうわけだか、今日ここにきみが来ることを、母が知っていたみたいだ」
「え…?ご存知だった?」
「うん…知っていたから、僕をここに来させた……」
「……」
ユニは、頭の中を整理するかのように、思案を巡らせた。
「きみを諦めるのは早いって…」
顔を上げたユニに、ソンジュンは続けて言った。
「母がきみを気に入ったみたいだ…」
ユニは無言のまま、寂しげな笑顔を浮かべて下を向いた。

「……そろそろ、行かないと」
立ち上がったユニの手を、ソンジュンが掴んだ。
ソンジュンの手の温かさに、ユニの目から涙が溢れそうになる。
ユニは、ソンジュンの手を振りほどくことも、想いを閉じ込めることもできなかった。

「ユニ(ya)……」

ユニの名を呼ぶ、ソンジュンの低く優しい声は、ユニから自由を奪い拘束する。
ソンジュンがすっと立ち上がり、ユニを引き寄せて胸に抱いた。
「父を失望させたのは、僕だ……きみのことは、きっと受け入れてくれる…僕の父だから」
ソンジュンの胸に抱かれたまま、ユニは彼を見上げた。
「……あなたは悪くないわ…私のせいで…たくさんの人を傷つけたの……なのに、あなたの傍にいたいなんて…私の心は狭くて、あなたを追い出せないの…」
ユニの言葉に、ソンジュンから安堵のためいきが漏れる。
「きみに会えなかった日が、どれほど辛かったか知ってる?…こんな思いは、一生に一度でたくさんだ」
ソンジュンの、愚痴をこぼすようなその口調に、ユニはくすっと微笑みを浮かべ、彼の胸に顔を埋めた。



※挿入する画像は、管理人の悪趣味により編集・加工を施しており、あくまでもイメージです。否定や侮辱ではございませんこと、ご容赦ください。実在する人物・団体とは一切関係がございません。

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→ MEMO&次回番外編のご案内 ←

こんにちは。バブルぅです。
お越しくださり、心より感謝申し上げます。

白砂村(パクサマウル)でソンジュンとユニが仲直り♪
今回のキューピッド役は、ソンジュン母でした。次は一体、誰!?(…次って)

偽善家の私は、炊き出しもボランティア活動の経験はございません。
気分を害する表現がございましたら、お詫び申し上げます。

さて、次回10/8(水)、10(金)、12(日)<追い詰められたインス>と題した番外編のご案内です。
インス vs. ヨンハのバトルを、前・中・後編の3回に分けて更新させていただく予定です。
いつものように妄想が膨らみすぎて、後編はダウンのパパまで、入り込んでしまいました(;^_^A
いかに、現実逃避したいのか…やれやれ…
面倒な展開でございます。題名通りのストーリーですので、スルーしていただいて構いません…

雨ばかりの9月ごろより、新しいゲスト様がお越しくださり、幸せな応援メッセージをいただいております。
ご自身のブログにてご紹介くださいました、いづあゆ様、拍手コメントくださいました、まり**様、一気読みいただいた、***ヨリムが様、リンリン様…、恋する***様。
いつも、秘密のコメントで、解析&楽しい会話をさせていただく(* ̄∇ ̄*)様
やんちゃ姫のくりこ様にはほっと癒され…ブロともメンバーの方からの応援メッセージも。
成均館スキャンダル二次小説を書かれている皆様から、たくさんの刺激を頂戴しております。

そして、拍手で応援くださる、たくさんのゲスト様。
追伸欄で恐縮ですが、本当に心より、深く感謝を申し上げます。

ブログを始めたころは、こんなにも長くお付き合いくださるとは、思ってもいませんでした。
始めたころのドキドキ感はいまだに持続しています。
更新日の18:59は、仕事してても、夕飯の準備をしてても、そわそわ…

私の中のストーリーは、そろそろ折り返し地点にやってまいりました(やっと、折り返しかい!?)
まだ、もう少し、ちょっとだけ、お立ち寄りくださいm(_ _)m

追伸の追伸…
オロオロとしていた頃、励ましてくださいました、肩パッド様、
ストーリーへのヒントや、ユチョンの魅力をお教えくださいました、みかん様。
こんなこと書いちゃいけないのですが…お元気でいらっしゃいますか?
お越し頂いていることを、心より願っております。

では…バブルぅ
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