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31 2017

母の計らい3

【成均館儒生たちの日々】に登場するキャラクターを、勝手に現代に置き換えた二次創作です。
原作やドラマ版から引用した部分もありますこと、ご容赦ください。



「ソンジュン……?」

―――母さん…

「お茶を一緒にいかが?」

部屋の扉をノックする音と母の声に、ソンジュンはパソコンのキーボードを打つ手を止めた。
ソンジュンは静かに立ち上がり、部屋のドアを開けた。
扉の向こうで、母セリョンが、ティーポットをのせたトレイを手に、優しい笑みを浮かべて立っていた。

 『中国の紅茶―――美味しいわよ―――』

紅茶の香りとガラスのティーポットに、孤島で過ごしたユニの笑顔が重なる。
父との面会のあと、しばらく時間が欲しいとユニに言われてから、半月が過ぎようとしていた。
ソンジュンは弱々しい笑みを浮かべて、母を部屋に招き入れた。

ソンジュン


セリョンは、手に持ったトレイをテーブルに置き、机の上のパソコンを見ながら尋ねた。
「勉強してたの?…お邪魔だったかしら?」
「いいえ……タウン誌のコラム欄への、記事をまとめていたところです」
「タウン誌のコラム?私の息子が?」
母が、驚いた表情を浮かべる。
まるで、少女のようなあどけない表情に、ソンジュンの顔に明るい笑顔が広がった。
「ええ、そうです。以前、知り合いから頼まれて書いたのをきっかけに、たまに依頼がくるんです」
「へえ、そうなの…すごいわね。どんなことを書くの?」
「そうですね…型にはめられていないので、時事ネタから政治に対する批評まで……」
ソンジュンらしくない、意地悪な言い方だ。
セリョンはバツが悪そうに、ソンジュンを睨んだ。
「まあ!あなたがそんな意地悪を言うなんて……でも、興味はあるわ。今回は、どんな内容なの?」
「聞きたいですか?」
ええ、とセリョンは頷いた。
「ことわざや格言についてです。同じ意味でも英語と韓国語では、ずいぶん表現が異なるといった内容です。例えば、【クリメ トッ(絵にかいた餅)】は【Pie in the sky】で空中のパイ、すなわち、空約束などのあてにならない話、に当てはまりますし……」
ソンジュンはセリョンに、いくつかのことわざの例を挙げて語った。
セリョンも興味深そうに、耳を傾けて聞いている。
「―――【カムン トゲ テジョプ パンヌンダ(親の七光り)】は【Ride on father's coattails】…これは、直訳すると、父親の燕尾服に乗る、になりますね……」
ソンジュンの口から無意識に出た言葉が、セリョンの胸に引っかかった。
「すみません、母さん……そんなつもりで言ったのでは…ありません」
母の暗い表情を見たソンジュンは、慌てて取り繕った。
「ソンジュン…あなたが、お父様がしたことを許せないのは、よくわかるの。だけど、それを辛いと感じているのも事実だわ……お父様もユニさんも大切に思うから…違う?」
「母さん…」
ソンジュンの顔に、傷をいやされた子供のような表情が浮かんだ。

「お父様は、少し勘違いをなさったみたいなの…ほら、週刊誌のあなたの記事を見て、お相手の女性がヒョウンさんだとばかり…」
セリョンの言葉に、ソンジュンは気まずそうに視線を外した。

まさか、両親がそんなゴシップ誌を見るなどと、考えもしなかった。
ソンジュンは、自分の軽はずみな行動が、両親の誤解を招いたうえ失望させ、挙句には大切な人を失いかけていることを痛感した。
あの日の出来事は、ユニだけではなく、ヒョウンも大きく傷つけた。
ソンジュンの顔に、深い傷と苦悩が浮かぶ。
セリョンは、そんな息子を労わるように、言葉を続けた。
「あなたの将来を思ってのことでしょうけど、お父様の、女性たちへの配慮に欠けた行いは、決して看過できないわ……お父様も、ユニさんの事を誤解していたって、すいぶんと反省なさってたわ」
「母さん…僕に原因があるんです。おふたりを責めるなんて、もってのほかでした。それなのに、彼女の傍にいたいなんて…愛想を尽かされて当然です…」
「あら?振られちゃったのかしら?」
「!?」
ソンジュンの瞳に暗い影が宿る。
「まだ、諦めるのは早いんじゃないかしら?……きっと、あのお嬢さんのことだもの、身を引こうとするのは、あなたの事を思ってのことよ…」
母は知っている。あの日以来、ユニと会っていないことを。
たった一度会っただけなのに、しかも言葉を交わさなくても、ユニの事をわかっているようだ。
諦めるのは早いという、母の言葉に、その通りだと心が叫ぶ。
母の笑顔に誘われるように、ソンジュンの顔に笑みが浮かんだ。

「お茶が冷めないうちに、美味しくいただきましょう…」

ソンジュンとセリョンは、ソファに並んで腰掛けた。
紅茶の良い香りと、母の笑顔が、荒んだ心を救ってくれるようだった。
ソンジュンの顔が和らぐのを見たセリョンは、彼に尋ねた。
「ソンジュン?あなた、ピノキオ友の会って覚えてる?」
「え?…あ、はい。母さんが理事だったNPOですよね?覚えてますよ。小学生のころ、よく連れて行ってもらいましたよね…でも、それが何か?」
ソンジュンの言葉に、セリョンは嬉しそうな微笑みを浮かべた。

父が国務総理(首相)になってから、母が理事を辞したというその支援団体は、現在は国からの助成金を受取りながら、活動を休止している団体になっているという。
少し前に、白砂村(ペクサマウル)に立ち寄り、親しくしていた住人に、支援活動を再開することを約束してきたと話した。

「……早速だけど、今週の土曜日に、炊き出しをすることになってて…私の代わりに、あなたに行ってもらいたいの」
「もちろん、いいですよ」
ソンジュンは、二つ返事で快く引き受けた。
「それでね、その日は、他のボランティアの人たちが、朝から来てくれるらしいの」
「同じ団体の方ですか?」
「いいえ、ピノキオからはあなただけになるわ…午後からの炊き出しを手伝ってくれるかしら?」
母はソンジュンに、丘の上の広場に行けば、ユンさんという老人があなたを待っているから、他のボランティアの人たちと一緒に、お手伝いして欲しいと言った。
ソンジュンが「任せてください」と言うと、母の顔に安堵の笑みが浮かんだ。

「さぁ、あとはお父様の番ね…」
セリョンが意味深な言葉をつぶやきながら、トレイを持って立ち上がった。
ソンジュンが部屋のドアを開けて待っていると、急に思い出したように母に尋ねた。
「そう言えば、母さん、あの日…父さんが、彼女の両親の名前を言ったのを覚えていますか?」
「えっ?」
セリョンの目に動揺の色が浮かんだが、ソンジュンは気づいていない様子だった。
「たしかに聞いた気がしますが、なぜ父さんが知っているのか、今さらながら気になるんです」
「ごめんなさい、覚えていないわ…日本語でお話されていたし……そう言えば、ユニさん、日本語がお上手だったわね……」
セリョンは、ユニの両親の話から逸らすように答えた。
「ああ、そうですね…彼女、日本語は、高校の時に留学生から習ったそうです」
「独学なのね……お父様もそのことをご存知だったようだし、ユニさんのご家族のことや得意なことくらいは、多少はお調べになったのでしょう……」
母の言葉に、ソンジュンは納得したような笑みを浮かべて、彼女を見送った。



※挿入する画像は、管理人の悪趣味により編集・加工を施しており、あくまでもイメージです。否定や侮辱ではございませんこと、ご容赦ください。実在する人物・団体とは一切関係がございません。

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