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27 2017

母の計らい1

【成均館儒生たちの日々】に登場するキャラクターを、勝手に現代に置き換えた二次創作です。
原作やドラマ版から引用した部分もありますこと、ご容赦ください。



「お疲れさまでした、奥様」
運転手のパクが、後部座席のドアを開けて待っていた。
国務総理夫人カク・セリョンは、やや疲れた顔に、優しい微笑みを浮かべながら『ご苦労さま』と運転手をねぎらい、後部座席に腰を下ろした。

セリョンは、政府高官の夫人らで構成された婦人会に顔を出し、帰途に就くところだった。
江南のレストランで昼食をとりながら行われ、表向きは、親睦会を兼ねた、社会奉仕活動についての意見交換を行うというものだったが、ご婦人たちの自慢話や噂話ばかりの会合にすぎなかった。
長官夫人であるヒョウンの母親も、会合に顔を連ね、セリョンの隣の席で延々と自慢話を語って聞かせた。
聞きたくもない話ばかりで、肝心の活動についてはそっちのけ。
中身の薄い会合にうんざりとさせられた。

セリョンは後部座席のシートにもたれて、静かに目を閉じた。
時折り目を開けて、窓からの風景を眺めるが、一向に変わらない様子に思わず声に出した。
「今日は、ずいぶんと混んでるのね…」
「そのようですね…もしかして、事故でもあったのかもしれません……このあとは、ご予定でもありますか?」
運転手のパクがルームミラー越しに、セリョンの顔色をうかがう。
「いいえ…大丈夫よ…」
セリョンは、心配顔の運転手に、鏡を通して微笑んで見せた。

しばらくして車が全く動かなくなり、運転手が窓を開けて外を覗き込むと、他の車に乗っていた人たちの何人かが、車を降りて歩く姿が見て取れた。
何台かが、横道に逸れて迂回する様子も見られる。
「奥様?…少し遠回りしますがよろしいですか?」
「ええ、お願いします…ここはどの辺りかしら?」
「もうすぐ、世宗大学です。中浪区を回って帰ります」
「中浪区?……パクさん、お願い…白砂村(ペクサマウル)へ寄ってもらえるかしら?……」
「え!?…奥様…」
「降りるつもりはないわ。自分を戒めるだけ……」
何か言いたそうにする運転手に、心配ないわ、とセリョンは答えた。
「かしこまりました…」

白砂村とは、ソウルの外れの高台にある「タルトンネ/月の街」と呼ばれるスラム街だ。
不法に占拠された土地に、雨風が凌げればいい、というような粗末な小屋が立ち並び、多くの貧困層が暮らしていた。

中渓洞に車が差し掛かった時、タルトンネの方角に向かう若い女性の姿が、セリョンの目に留まった。
先日、ソンジュンが【クンジュン/宮中】に連れてきた、ユニの横顔に似ている。
「あの女性……パクさん、ここで停めてくださる?」
「え!?降りられるんですか?」
「ええ、早く!」
「でも…おひとりでは危険です。奥様に何かあったら…」
「いいえ、大丈夫よ……知っている人かどうか、確かめるだけだから。ここで待っててくださる?」
「でしたら、私もご一緒します」
「すぐ戻るから、お願い……」
セリョンは、運転手に言い聞かせると、彼は渋々ながら路肩に車を停めた。

車を降りたセリョンは、ショールを頭にかぶり、くるっと首に巻いて口元を覆うと、女性が向かった方向へあとを追いかけた。
すぐに女性の後ろ姿を捉えると、セリョンは、女性に気付かれないようについて行く。
女性は両手に重そうな買い物袋をさげ、粗末な小屋が立ち並ぶ細い路地を、慣れた足取りで高台を登って行った。
しばらくして、とても家とは呼べない小さな小屋の前に立ち、薄い板の戸を叩いた。

「おばちゃん、こんにちは!ユニよ!」
「あいよ、開いてるから、遠慮しないで入っといで」
中から老女の声がすると、ユニはにっこりと笑みを浮かべながら、小屋の中に入って行った。
小さな部屋に3人の老女が火鉢を囲んで座り、ユニを笑顔で迎えた。
「いらっしゃい、ユニちゃん」
「元気だったかい?」
「今日は寒かったろう?」
老女たちは、口々にねぎらいの言葉をかける。
ひとりの老女が、ユニの顔を愛おしむように見つめて、心配そうに尋ねた。
「おや?何かあったのかい?いつもと違う感じがするんだけど…悩み事があるなら、話してごらんよ?私らは聞くことしかできないけど…」
他の二人も、そういえば、と心配そうにユニの顔を見た。
「ありがとう、大丈夫よ…最近、勉強が難しくて…でも、おばちゃんたちの顔を見るだけで、とっても元気になれるわ…」
「あはは、そうかい?でも、ごめんよ。勉強のことなら、私らが聞いてもさっぱりだ…あははっ」
そうそう、と3人の老女の笑い声が響く。
ユニは楽しそうに笑いながら、両手に下げてきた物を、老女たちに広げて見せた。
米や麺のほかに、果物や肉や魚の干物などを並べ「ヨリム兄(オッパ)からの土産よ」と言って差し出し、彼女たちを喜ばせた。
「焼酎もあるのかい?」
「そうよ。オッパ(ジェシン)が持ってって欲しいって」
「おや、嬉しいねぇ…あの二人も、きっと元気に違いないね?」
「ええ、間違いないわ。おばちゃんたちは、よくご存じね?うふふ」
狭い部屋に、ユニの可愛い笑い声と、老女たちの笑い声が響き、あたたかな空気に包まれた。

ソンジュン母


「ちょっと…あんた、ここに何か用かい?」

窓の隙間から、中の様子を覗いていたセリョンの背後から、低い男の声がした。
突然の声に驚いたセリョンが後ろを振り返ると、そこには長身の痩せた老人が立っていた。
この場所には不似合いな装いの女が、こっそりと小屋の中を窺う様子は、明らかに怪しい。
頭と口元をショールで覆ったセリョンを、老人は訝しげな表情で上から下まで眺めた。

セリョンは、サングラスを外し、口元を覆っていたショールをずらして顔を見せると、老人に向かって頭を下げた。
「ユンさん…すみません、私です、セリョンです」
「……や!あんたは…奥さん…!?」
「ずいぶん、ご無沙汰しております…なかなか、こちらに寄せてもらえなくて…」
ユンと呼ばれた老人は、楽しげな笑い声が響く部屋の中をのぞき、ユニの姿を捉えると、セリョンに向かって尋ねた。
「奥さん、あなたは、あの娘とお知り合いですかな?」
「ええ……実は、あのお嬢さん…息子の想い人なんです」
「えっ?ユニが?……奥さんの息子さんって、以前ここに連れて来ていた、あの賢そうな坊ちゃんの?」
セリョンはぎこちない笑みを浮かべ、小さく頷いた。
「でも…大人たちの利益のために、恋い慕うふたりを引き離そうとしているようで…」
暗い影を落とすセリョンの表情に、ユンと呼ばれた老人は「こっちへ来なさい」と、彼女を憩いの場のようなスペースに連れて行き、どこからか持ってきたであろうベンチに座らせた。
そして、ここで少し待つように言うと、どこかに行ってしまった。

ひとり残されたセリョンは、運転手が心配しているのではないかと、電話を取り出した。
「もしもし?パクさん?私です……」
運転手は一向に戻ってこないセリョンを心配して、車を離れようとしていたところだと言った。
セリョンは、やはり知り合いのお嬢さんだったと言い、運転手に待ってくれるよう頼んだ。

しばらくして、ユン老人がセリョンのところに戻ってきた。
セリョンの隣に腰を下ろし、手に持っていた週刊誌を差し出して見せた。

―――ソンジュン…?

「ユンさん…これ…」
「奥さんの息子さんって、ここに写ってる青年かい?」
「そうよ、息子のソンジュンに間違いないわ…でもこれ、いつの週刊誌かしら?」
「少し前のだろうが、ここに写っている青年が、奥さんの息子さんとは……ということは、奥さん、あんたは首相夫人かい?」
ユン老人は驚いた表情で、セリョンを見た。
「ええ…黙っていたわけではないの。ここへ寄せていただいた頃は、首相ではありませんでしたので…それより、なぜこれを?」
「これは、道で拾ったものだが、うちの家内が、ユニが載っていると言って、取っておいたんだ…相手が国務総理の一粒種とあれば、すごいことだって……息子さんが愛おしそうに見つめてるだろう?政府高官の令嬢とあるが、間違いなくユニだって」
ユン老人は、ソンジュンと手をつないでいる写真を指さして言った。
「え…?」

―――ヒョウンさんではないの!?

セリョンはどういうことかしら?という表情を浮かべた。
「奥さん、ここに写っている鞄に、ノリゲのような飾りが付いているだろう?これは、家内がこしらえて、ユニにあげたもので、ふたつとない……ずいぶんと前のものなのに、大事にしてくれている…私らには、こんな物しかお礼ができなくてね…」
「お礼……?」
「そうです……あの娘と初めて出会ったのは……」
ユン老人は、優しい笑みを浮かべ、昔を懐かしむように語り始めた。


※挿入する画像は、管理人の悪趣味により編集・加工を施しており、あくまでもイメージです。否定や侮辱ではございませんこと、ご容赦ください。実在する人物・団体とは一切関係がございません。

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こんにちは。バブルぅです。
お越しくださり、感謝申し上げます。
そして、温かいメッセージや拍手くださる皆様、いつも本当にありがとうございます。

今回はスラム街【タルトンネ】を背景として、妄想を膨らませました。
半年くらい前でしょうか…朝の情報番組でソウル近郊のスラム街として特集されていました。
タルトンネで暮らす高齢者は、貧しくても明るい笑顔で、温かい気分にさせられましたが、貧困からはどうしたって抜け出せない現実も見えました。
日々、不平不満をダダ洩れさせてますが、仕事もあり、家族がいて、ご飯が食べられることを感謝しないといけないですね...

さて、ソンジュンのお母さんが、以前、縁のあった場所でユニを見かける…
【いかにも、(昔の)ドラマにありがち】なシチュエーション(;^_^A

それぞれの縁について、番外編として設けました。
(ストーリーがあちこちに散らかってて…も~大変!!)
母の計らい2<記事の真相>と題して、明後日10/29(日)18:59
母の計らい3:本編は10/31(火)18:59の更新を予定しています。

まだまだ、もう少し、バブルぅの妄想にお付き合いください♪

では、皆さまのお越しをお待ち申し上げます。
バブルぅ
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2 Comments

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2017/10/27 (Fri) 22:06 | EDIT | REPLY |   

aunt Bubble  

Re:2017/10/27 (Fri) 22:06に秘密のコメントをくださいました***様

こんにちは。(* ̄∇ ̄*)様。バブルぅです。
お越しくださりありがとうございます♪

>読み手専門なので、あしからず。
(*´艸`*)
まぁ~!もったいない!?
私もそうでした…更新が待ち遠しくなって、とうとう頭の中から飛び出しちゃって、今に至ります(;^_^A
なので、きっと(* ̄∇ ̄*)様も…、新たなカラユニが飛び出すことでしょう(*^^*)
その際には、是非、一番に私に教えてくださいね♪

>お金も地位もないかもしれない。だからこそ、人として本当に大切なものを知っている。逆にそれでしか人を測ることができない人達の浅ましさも。
>セリョンはユニにシンパシーを感じているんじゃないかな。同時に断ち切れない因縁をあらためて感じている。
(*´艸`*)
ユニのような女の子……私の周りには残念ながらいません(TT)韓国版シンデレラかしら?ここでのソンジュンママは、未来のユニの姿…
原作の閣夫人はとっても素敵な女性だったので、素敵な女性に描けるとイイですね♪
【因縁】…ドラマでは、ジョンムと、ユニの父との因縁、原作では老論と南人の因縁が描かれていました。
私のストーリーの中でも、イ家と、ムン家、ユニの両親の因縁を妄想しています(;^_^A
原案では、とっくに完結しているのですが(笑)(* ̄∇ ̄*)様をはじめ、皆様のコメントに影響されて、さらに妄想を膨らませています♪
楽しくキーボードを叩いています~~(*´艸`*)

>幸せのきっかけはどこにあるのかな?
(*´艸`*)
心の使い方次第ですね……な~んて( ̄∇ ̄;)ハッハッハ

……では…バブルぅ

2017/10/28 (Sat) 23:29 | EDIT | REPLY |   

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