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21 2017

イ・ジョンムの選択5

【成均館儒生たちの日々】に登場するキャラクターを、勝手に現代に置き換えた二次創作です。
原作やドラマ版から引用した部分もありますこと、ご容赦ください。



「どこへ行くのだ!」

ジョンムの低い声が、広い部屋を漂う、張り詰めた空気を震わせる。
ユニは、怒りで震えるソンジュンの手を制止するように、反対側の手で彼の手にそっと添えた。
ヒョウンは無表情のまま一点を見つめ、ソンジュンの母だけが、聞かされていない状況に戸惑いを隠せない様子だった。




「立ったままでいないで、座りなさい」
ジョンムがそう言うと、給仕係が空いている椅子を引いて、ふたりに座るよう促した。
「父さん、これはどういうことですか!?」
声を荒らげたソンジュンに、ジョンムは鋭い視線で彼の口を封じた。
そして、ユニに視線を向けて韓国語ではなく、突然日本語で話し始めた。

 “キム、ユニさんだったね?きみは日本語で話せるね?”

前もって調べたのであろう、ユニが日本語を得意としていることを知っている。
そして、ソンジュンがそれほど精通していないということも。

―――彼の前で、彼に聞かせたくないことを…お尋ねになるのだわ…

ユニは戸惑いながらも、ジョンムの意図としていることを察知して、首を縦に振った。
何度も頭の中で繰り返した、初めましてという挨拶すら、ユニには許されない空気だ。
ソンジュンが口を開きかけると、平気よ、とでも言うように、微笑みを浮かべて小さく頷いた。

 ”きみは、息子に婚約者がいると知った上で、近づいたというのは…本当かね?”

ジョンムはユニに日本語で問いかけた。

 ”申し訳ございません。ヒョウンさんのことは、存じておりました”

少し間をおいてから、ユニが顔を上げて流暢な日本語で答えた。
ジョンムは感心したように、目を細めて彼女をじっと見つめた。

―――美しいというだけではなさそうだな。おしいことだ…。

 ”息子は、そこいらにいる若者とは違う。わかるね?…かりそめの恋を楽しむのは、若いゆえ、しかたのないことだが、私の息子は、いずれしかるべき女性と結婚し、家庭を持つ……息子を支えるには、きみにとって少しばかり、荷が重いのではないかと思うのだが……遠くない将来、きみやきみの家族が世間にさらされて、大きな傷を負うのではないかと、とても心配なんだよ……では、どうすべきなのか……きみのような賢い女性には理解できるだろう?……すまないが、息子と出会う前についてだが、少し調べさせてもらったよ……きみはク・グループのご令息と婚約関係にあったらしいが、同じ頃に息子と知り合ったというのは、間違いないかね?”

ユニは、ジョンムの流暢な日本語を、神妙な面持ちで一言も漏らさずに聞いていた。
ヨンハとのことに触れられて、違うと否定したところで、あれは偽りだったと信じてもらえるはずがなかった。
ヨンハに雇われたとはいえ、公の場で婚約者を演じていたのだから。
ユニは、一言も返すことができず、眩暈を覚えながらも首を縦に振った。

日本語が得意ではないソンジュンは、会話の内容を必死で追いかけながらも、父の婉曲的な言い回しに、ついていくことができず下唇を強く噛んだ。
ジョンムが放つ、目に見えない重厚な空気が彼の口を塞ぐ。

 ”ところで、きみの両親のことだが……科学検査協会の試験官だったキム・イヨン、イ・ミリ夫妻かね?”

「はい……ですが、なぜでしょうか?」
突然、自分の両親の名前が、ジョンムの口から飛び出したことだけではなく、両親のことを知っているかのような口調に、驚きと恐怖を覚えて思わず韓国語で聞き返した。

「いや……調査に間違いがないか、確認しておこうと思ってね」
ジョンムはそれだけを言うと口を閉ざした。
母のセリョンは、日本語で話す会話の内容がわからずとも、夫の口からユニの両親の名前が飛び出すと、驚いた表情を浮かべ、何かを言わんとして口を開きかけた。
「父さん!彼女と会わせてくれと言ったのは、こういうことだったのですか!?恫喝するなんてあんまりだ……卑怯です!」
重苦しい空気から抜け出したソンジュンが、やっとのことで声を絞り出した。
ソンジュンは、お願いやめてと請うユニの視線を避け、その先でテーブルを見つめたままのヒョウンに視線を移すと、ためらいながらも言い放った。
「……僕は、ヒョウンとは結婚しません」
ソンジュンの言葉に、ヒョウンは手で顔を覆い、わぁっと泣き出した。
ユニはいたたまれず、静かに立ち上がり「失礼します」と頭を下げると、ソンジュンを振り返ることもしないで、足早に部屋を出て行った。
ユニのあとを追うように、部屋から出ようとするソンジュンの前を、秘書が立ちふさがり睨みあう。
今にも掴みかかりそうに、どいてくれというソンジュンを無視して、秘書は動こうとしなかった。
「行かせてやれ」
背後から、ジョンムの声がした。
追いかけても無駄だ、と言っているようにも聞こえる。
ソンジュンは、腹の奥底から湧き上がる怒りを目に溜めて、父を振り返った。
ジョンムは息子と目をあわせようとせず、眉間にしわを寄せた表情で、グラスに注がれた水を口に含んだ。
傍らには悲壮な顔をした母が、咽び泣くヒョウンの肩を抱いている。
ソンジュンは無言のまま、秘書を押しのけて部屋を出て行った。



※挿入する画像は、管理人の悪趣味により編集・加工を施しており、あくまでもイメージです。否定や侮辱ではございませんこと、ご容赦ください。実在する人物・団体とは一切関係がございません。

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4 Comments

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2017/10/22 (Sun) 23:33 | EDIT | REPLY |   

aunt Bubble  

Re: 秘密のコメントをくださいました***様

2017/10/22 (Sun) 23:33 に秘密のコメントをくださいました(´>∀<`)ゝ様へ

こんにちは。バブルぅです。 (*^_^*)
コメントをくださいまして、ありがとうございます。
読ませていただくと、私の厄介な妄想癖が長所に思えてきます…(幸せなバブルぅ)

すみません…また、引用させていただきます♪

> ご無沙汰してます(´>∀<`)ゝ
(*´艸`*)
とんでもございません!!お元気でいらっしゃいましたか?


> 「惜しい」ジョンムのその一言が全てを語っている気がします。
> ユニの魅力、惹かれるソンジュン、そしてユニの両親と関係?
> 金や地位目立てにソンジュンに近づいたのではないなら…と冷たい言葉でユニを諭したけれど、ユニを試しているような気がする!
(*´艸`*)
ジョンム=冷酷な父親にはしたくありませんでした。
ウギュの言葉を100%鵜呑みにしているわけではないのですが、ヨンハと婚約関係にあったことは事実として認めているんです。
けれど会ってみれば、狡知さは全く感じられない…むしろ、ユニに対して好印象なんです。


> ソンジュンが諦めない事もわかってる。
(*´艸`*)
はい!ソンジュンは決して諦めない…ジョンムは息子の性格をよく知っていて、だからユニに身を引けと…
じゃあ、他にも理由がありそう?…ユニの両親!!
ユニの両親…次回記事で少しだけ吐露します。
「因縁」があります…それは、後々のお話で(;^_^A

…なに、言ってんだか…


> この場面で一番突きつけられたのはヒョウン。
> ソンジュンの心が欠片も無い事。自分が「しかるべき相手」では無い事。嘘で防備した自分と、嘘をも飲み込むユニとの差。
> 日本語はわからないかもしれないけど、痛切に感じただろうな。
(*´艸`*)
さすが、鋭いですね~~~!!なるほど~~♪
ヒョウンお嬢様、彼の両親が何とかしてくれるって、ほんのひとかけらの可能性を信じてやってきたんです。
なのに、痛烈なソンジュンの一言…
ドラマのワンシーンで、貰冊房でソンジュンがヒョウンに告げた「僕にはすでに心を許した人がいます」からお借りしてます(;^_^A

ソンジュンは、(興味のない)女性への配慮に欠けてます。父親似です。
ジョンムも、全く女心というものに疎い…

今後のヒョウンお嬢様…身の振り方を検討中です(;^_^A

長々とすみません…

では、またお越しくださいますか?

バブルぅ

2017/10/23 (Mon) 23:58 | EDIT | REPLY |   

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2017/10/25 (Wed) 01:15 | EDIT | REPLY |   

aunt Bubble  

Re: 2017/10/25 (Wed) 01:15に秘密のコメントをくださいました***様

こんにちは。?(*´?`*)?様。バブルぅです。
こちらこそ、ありがとうございます♪

> 私も妄想族です!
(*´艸`*)
えええ~~~!!?(*´?`*)?様は、もしかして二次小説をお書きですか?
もしそうでしたら、今、一番読ませていただきたいです♪


>心のすべてを捧げた人がいます。と勝手に解釈しています(笑)
(*´艸`*)
ソンジュンという男は、理想像ですね。ユニという女性も…
いわれた~い!!


>ヒョウンは幸せになって欲しい。
~略~
>不器用なソンジュンではなく、百戦錬磨のヨンハが救ってくれるのでは?と勝手に思ってます(笑)
(*´艸`*)
勝手ではございません!!(笑)よ~くご存知でいらっしゃる♪


本当に、ご丁寧なコメントをくださり感謝申し上げます。
成均館のキャラクターをこよなく愛されてるのが伝わってまいります。
また共有させていただくことが大変うれしいです。

まだまだお付き合いくださることを、心より願っています。

では、また…
バブルぅ

2017/10/25 (Wed) 22:53 | EDIT | REPLY |   

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